経審(経営事項審査)の点数とは
建設会社の経営力と技術力を数値化した「総合評定値P」のこと。完成工事高(X1)・自己資本と利益(X2)・経営状況(Y)・技術力(Z)・社会性(W)の5項目を重み付けして計算した全国共通の点数で、公共工事の入札ランク(等級)の判定に使われます。
この記事は、建設業許可を取得したばかりの経営者・事務担当者や、公共工事への参入を検討している建設会社向けに解説します。
※本記事は2026年10月時点の情報です。経審の評価基準は毎年のように改正されるため、申請前には必ず出典に挙げた公式情報で最新の基準をご確認ください。
目次
- 経審の点数とは?経営事項審査の仕組みと公共工事での役割
- 経審の点数の計算方法と結果通知書の見方
- 経営規模X1・X2の点数はどう決まる?
- 経営状況Yの点数を決める経営状況分析と財務指標
- 技術力Zの点数を上げるには?
- 社会性Wの加点・減点項目
- 経審の点数の目安は?平均点・入札ランクから目標を決める
- 経審申請の流れと準備
- 経審の点数アップを進める実践手順と専門家への相談方法
- 経審の点数に関するよくある質問(FAQ)
1. 経審の点数とは?経営事項審査の仕組みと公共工事での役割
経審は建設業許可とは別物です。許可が「工事を業として請け負う資格」なのに対し、経審は「その会社の経営力・技術力を点数化する採点」で、公共工事の入札参加資格を判定する材料になります。
建設業許可は、工事金額500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事を請け負うために必要な資格です。一方、公共工事の入札に参加するには、発注者(国・都道府県・市町村など)ごとの「入札参加資格審査」に合格しなければならず、その判定に経審の点数が使われます。つまり、経審を受けないままでは公共工事の入札に出られないです。
1-1 建設業許可だけでは足りない?公共工事の入札参加資格と経審の関係
公共工事の入札参加資格は「経審の点数」をもとに発注者ごとに格付け(等級)が決まるため、許可だけでは入札すらできません。
入札参加資格審査では、経審の総合評定値Pに加えて、決算の規模や営業実績など発注者ごとの基準が組み合わされ、「A・B・C…」などの等級が付与されます。等級が上がるほど、金額の大きい工事の入札に参加できます。経審は一度受けたら終わりではなく、毎年の決算ごとに更新していく仕組みです。
1-2. 総合評定値Pを構成する5つの要素|経営規模・経営状況・技術力・社会性
総合評定値Pは、X1(完成工事高)・X2(自己資本と利益)・Y(経営状況)・Z(技術力)・W(社会性等)の5評点の重み付き合計です。
計算式は次のとおりです(小数点以下は四捨五入)。
総合評定値P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
- X1(完成工事高)とZ(技術力)の2項目で重みの半分(0.50)を占めます
- Y(経営状況)は決算書そのものが問われる項目です
- W(社会性等)は加入制度などの加点・減点の集まりです
制度設計上は、各評点とも平均700点になるように作られています。評価の上げ方は、重みの大きいX1とZをどう伸ばすかです。
1-3. 審査の対象業種と評価項目|工事の種類によって点数は異なる?
経審は建設業許可の29の業種区分ごとに受けます。X1とZは業種ごとに点数が変わり、X2・Y・Wは業種が変わっても共通です。
例えば「土木一式」と「とび・土工・コンクリート」の両業種で経審を受ける場合は、P点が2通りの数字で出ます。「土木一式=○点、とび・土工・コンクリート=△点」のように、工事の種類ごとに点数が付く点が重要です。入札でどの業種の工事を狙うのか、発注者の条件を踏まえて、申請する業種を戦略的に選ぶことができます。
1-4. 審査基準日は原則として決算日|点数に反映される期間と有効期間
審査基準日は原則として決算日です。実務上は毎年更新の受審が必要になります。
3月決算の会社なら、3月31日の決算数値をもとに経審を受けます。期限は自治体ごとに管理されるため、発注者の案内を必ず確認してください。
2. 経審の点数の計算方法と結果通知書の見方
点数は「P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W」で計算され、結果は「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」に記載されます。まず見るべきは総合評定値Pです。
2-1. 総合評定値Pの計算式|X1・X2・Y・Z・Wの評点と配分を解説
各評点は国土交通省の評点で点数化され合計します。
| 評点 | 中身 | 計算 |
|---|---|---|
| X1 | 工事種類別年間平均完成工事高 | 0.25 |
| X2 | 自己資本額および平均利益額 | 0.15 |
| Y | 経営状況分析(8指標) | 0.20 |
| Z | 技術職員数および元請完成工事高 | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 0.15 |
例えば各評点が「X1=650、X2=600、Y=700、Z=550、W=750」だった場合、P=0.25×650+0.15×600+0.20×700+0.25×550+0.15×750=632.5→633点(四捨五入)となります。このように、X1やZが低いと同じY・WでもPは伸びません。
2-2. 各項目の最高点・最低点は?配点と評価基準を確認
評点ごとに上限・下限が決まっており、Wはマイナス評価もあり得ます。
| 評点 | 上限(最高点) | 下限(最低点) |
|---|---|---|
| X1 | 2,309点 | 397点 |
| X2 | 2,280点 | 454点 |
| Y | 1,595点 | 0点 |
| Z | 2,441点 | 456点 |
| W | 2,074点 | -1,837点 |
Wは社会保険未加入や法令違反などで減点が発生する項目のため、マイナスの下限が設けられている点に注意が必要です。減点はそのままPに反映されるため、加点を伸ばすより先に「減点をゼロにする」のが基本です。
2-3. 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書で確認すべき数値
まず総合評定値P、次に5評点の内訳、そして業種ごとの点数の3点を確認します。
結果通知書には、申請した業種ごとに総合評定値Pと、X1・X2・Y・Z・Wの評点が記載されています。確認のポイントは次のとおりです。
- 総合評定値P:等級判定の基礎になる数字。自治体の等級基準と照らして目標に届いているか
- 各評点の内訳:どの評点が平均(目安700)を下回っているか。次回の改善対象がこれで決まる
- 減点の有無:Wの減点や社会保険未加入の指摘がないか。減点は次回申請までに解消する
自社が狙う発注者の入札参加資格基準と照らして「何点足りないか」を把握するのが、通知書を受け取ったら最初にやるべき作業です。
2-4. 無料シミュレーションの使い方|必要なデータと試算時の注意点
決算書2期分・技術職員情報・工事別の完成工事高・加入制度の状況があれば、無料ツールや専門家の試算で点数の見込みを概算できます。
経営状況分析機関やソフトウェア提供会社、行政書士事務所などが無料のシミュレーションや簡易試算を提供しています。手順は次のとおりです。
- 直近2期分の決算書を用意する:建設業財務諸表の様式(法人は4表、個人は貸借対照表・損益計算書など)に沿ったものが理想
- 技術職員の資格一覧をまとめる:氏名・資格・雇用形態・講習の受講状況
- 工事別の完成工事高を集計する:元請・下請の区分、業種ごとの金額
- 加入制度を確認する:建退共・中退共・社会保険・建設機械保有・ISO登録など
- ツールに入力して試算する:X1〜Wの評点とPの見込みを出す
シミュレーションはあくまで目安であり、正式な点数は許可行政庁と分析機関の審査を経て初めて確定する、という点です。特に決算書の記載内容(科目のまとめ方や消費税の扱い)で結果が変わるため、本申請の前には専門家チェックを受けるのが安全です。
3. 経営規模X1・X2の点数はどう決まる?完成工事高・自己資本・利益の評価
X1は「業種ごとの完成工事高」、X2は「自己資本額と利益額」で決まります。どちらも申請書の選択(平均年数や2期平均の有無)で点数が変わるため、有利な選択を理解することが重要です。
3-1. X1は業種別の完成工事高を評価|直前2年平均・3年平均の選択方法
X1は工事の種類ごとの年間平均完成工事高を、1,000万円未満から1,000億円以上までの42段階の区分に当てはめて点数化します。平均年数は「2年」か「3年」のどちらかを選択できます。
完成工事高とは、その期に完工した工事の売上高のことです。経審では「直前2事業年度の平均」または「直前3事業年度の平均」のどちらか有利な方を申請書で選べます。期ごとの売上の増減が大きい会社では、3年平均の方が点数が高くなるケースがあります。選んだ平均年数は、技術力Zの元請完成工事高の計算にも同じものが使われる点に注意してください。
3-2. 土木一式・とび・土工・コンクリート・管工事などの業種区分と完成工事高の振り分け
完成工事高は29の建設業業種区分ごとに振り分けて申請します。振り分け方と「積み上げ」の活用で点数が変わります。
1つの工事に複数の業種の作業が含まれる場合、内容に応じて完成工事高を業種ごとに振り分けます。また、ある業種の完成工事高を内容に応じて他の業種に「積み上げて」申請できる制度があり、これによって業種ごとの点数を調整できる場合があります。さらに、土木一式では「PC(プレストレストコンクリート構造物)工事」、とび・土工・コンクリートでは「法面工事」、鋼構造物では「鋼橋上部」のように、特定の内訳を別途点数化する業種もあります。完成工事高の振り分けは証明資料と突き合わせて審査されるため、実態と一致させた集計が前提です。
3-3. X2の自己資本額は単独決算と2期平均でどう変わる?
X2は「自己資本額点数」と「平均利益額点数」の平均で算出され、自己資本額は2期平均するかしないかを選択できます。
自己資本額は貸借対照表の純資産合計(単独決算ベース)です。当期と前期の平均にするか、当期のみにするかは選択でき、赤字期を挟むケースなどでは選択によって点数が変わります。X2=(自己資本額点数+平均利益額点数)÷2(小数点以下切り捨て)なので、自己資本を厚くする(利益剰余金を積み上げる)ことがX2改善の基本です。
3-4. 利益額は営業利益と減価償却実施額で評価|決算書からの計算方法
平均利益額に使う利益は「利払前税引前償却前利益」で、決算書上は「営業利益+減価償却実施額」で計算します。
平均利益額は、この利益の当期と前期の2期平均です。減価償却費を足し戻すため、設備投資をした会社でも利益評価が極端に落ちない仕組みになっています。計算のもとになるのは建設業財務諸表なので、減価償却実施額の記載漏れがないか、決算書の作成段階で確認しておくことが大切です。
4. 経営状況Yの点数を決める経営状況分析と財務指標
Yは決算書から8つの指標を計算して採点します。借入金の圧縮・利益の確保・固定資産と自己資本のバランスが評価の柱です。
4-1. 経営状況分析の8指標|収益性・効率性・財務の健全性を確認
Yは「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4分野、各2指標の合計8指標で評価します。
| 分野 | 指標 |
|---|---|
| 負債抵抗力 | 純支払利息比率、負債回転期間 |
| 収益性・効率性 | 総資本売上総利益率、売上高経常利益率 |
| 財務健全性 | 自己資本対固定資産比率、自己資本比率 |
| 絶対的力量 | 営業キャッシュフロー(絶対額)、利益剰余金(絶対額) |
経営状況分析は、許可行政庁とは別の「登録経営状況分析機関」に決算書を提出して受けるため、経営規模等評価と申請先が分かれている点に注意してください。Yの評点はこの分析結果をもとに算出されます。
4-2. 借入金・支払利息・受取利息が分析指標に与える影響
借入金が多く支払利息がかさむと、負債抵抗力の指標を圧迫します。受取利息の計上漏れをなくすだけでも指標は改善します。
負債抵抗力は「借入金の重さと利息負担」を測る指標です。支払利息から受取利息を差し引いた純支払利息が評価に関わるため、預金の受取利息を決算書に計上していない会社は、計上するだけで改善の余地があります。逆に、借入金の返済はすぐには進まないため、Y対策は「支払利息を減らす」「利益を積み上げる」の両輪で中長期に取り組むものです。
4-3. 固定資産と自己資本のバランス|資産・負債の計上を確認するポイント
自己資本対固定資産比率は「固定資産を自己資本でどれだけ賄えているか」を測る指標です。遊休固定資産の圧縮と利益剰余金の積み上げが基本の改善策です。
帳簿価額が残ったままの遊休資産や、実態と合っていない固定資産の計上は、財務健全性の指標を歪めます。減価償却のつけ直しや売却、貸借対照表の整理を税理士と一緒に行うと、Yの指標が自然に改善していきます。なお、資産・負債の計上は建設業財務諸表の様式・注記のルールに沿っている必要があり、5%を超える資産は科目を明記するなどの決まりがあるため、様式どおりの作成が前提です。
4-4. 決算対策は適正な会計処理が前提|税理士と検討したい改善方法
結論:Yの対策は「点数のために決算書を操作する」ことではなく、適正な会計処理のうえで評価されやすい実態を作ることです。
売上や資産の水増し、費用の先送りなどの不適正な処理は、経審だけでなく決算変更届や税務申告との不整合を招き、最悪の場合入札参加資格に影響します。改善の方向性は、①売上総利益率・経常利益率を上げる採算管理、②借入金の返済計画、③利益剰余金の積み上げ、④固定資産の整理の4つです。いずれも決算の作り方に関わるため、経審を理解している行政書士と相談するのが近道です。
5. 技術力Zの点数を上げるには?資格・技術職員数・元請実績の評価
Zは「技術職員数点数(Z1)×4+元請完工高点数(Z2)÷5」の計算式で決まります。つまり、資格を持つ常勤の技術職員と元請実績が評価の中心です(小数点以下切り捨て)。
ZはX1と同じく重み0.25の高配点項目で、業種区分ごとに点数が決まります。資格の取得・講習の受講は「いつでも効く加点」ではない(常勤性や証明書類が必要)ため、採用・育成計画とセットで考える必要があります。
5-1. 技術職員数はどう数える?技術者の雇用関係・常勤性と必要な証明資料
技術職員は「常時使用する職員」として、雇用関係と常勤性が確認できることが前提で数えます。
カウントの条件は、雇用契約に基づく常勤職員であること(出向・兼務の扱いに注意)と、社会保険への加入などの実態が証明できることです。資格証明書・雇用契約書・社会保険の加入証明などが証明資料になります。代表者や役員も雇用関係の実態があればカウントできる場合がある一方、外部の協力会社の技術者を自社職員として数えることはできません。1人の技術職員が複数の業種区分でカウントできるかどうかは業種と資格の組み合わせによるため、申請書作成前に確認してください。
5-2. 資格ごとの点数一覧|1級・2級施工管理技士などは1人で何点になる?
資格の等級ごとに「1人あたりの点数」が決まっており、1級監理受講者が最も高い6点です。
代表的な区分の点数(1人あたり)は次のイメージです。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| 一級監理受講者(1級資格+監理技術者講習修了) | 6点 |
| 1級技術者(監理技術者講習未受講) | 5点 |
| 監理技術者を補佐する資格保有者 | 4点 |
| 登録基幹技能者など基幹技能者区分 | 3点 |
| 2級技術者など | 2点前後 |
| その他の区分 | 1点 |
施工管理技士や建築士など、どの資格がどの区分に該当するかは「技術職員資格区分コード表」で判定されます。同じ1級資格でも監理技術者講習を受講しているか否かで1点差がつくため、講習の受講を先に進めるのが定石です。
5-3. 監理技術者資格者証と講習の扱い|加算要件と有効期限を確認
1級資格者が監理技術者講習を受講すると「一級監理受講者」として6点に加算されます。講習の効果には期限があるため、更新(追加講習)の管理が必要です。
5-4. 元請完成工事高の評価|下請工事との区分と実績の集計方法
Zのもう一つの柱は「元請として完工した工事高」です。下請けとして請け負った工事は含めず、元請分だけを集計します。
元請完工高も完成工事高と同じく2年または3年平均(X1で選んだ年数と同じ)で評価します。下請主体の会社ではZ2が伸びにくいため、公共工事や直接元請の実績を積むことが中長期のZ対策になります。土木一式のPC工事、とび・土工・コンクリートの法面工事、鋼構造物の鋼橋上部は、内訳として元請完工高が別途点数化される点も覚えておきましょう。
5-5. 事務職員の建設業経理士資格はZではなく社会性Wで評価される
建設業経理士の資格は技術力Zではなく、W(社会性等)の「建設業の経理の状況」で加点対象になります。
技術職員Zは工事に関わる技術資格が対象で、経理・事務系の資格はカウントしません。建設業経理士1級・2級の資格を持つ事務職員を配置している場合は、Wの経理の状況に関する加点として評価されます。「Zを上げたいから経理士を数える」という取り違えがないよう、資格は「技術系か事務系か」で整理しておきましょう。
6. 社会性Wの加点・減点項目|加入制度と取組状況を確認
Wは「社会性」を測る加点・減点の集まりです。審査基準日が令和5年8月14日以降の申請では、8項目の合計を係数で換算して算出します。
W=(W1担い手の育成及び確保+W2営業継続+W3防災協定+W4法令遵守+W5建設業経理+W6研究開発+W7建設機械保有+W8規格登録)×(1,750÷200)(小数点以下切り捨て)
令和5年1月改正で、従来の「労働福祉」「若年の技術者・技能者の育成確保」「知識・技術の向上」は「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況(W1)」に統合され、ワーク・ライフ・バランスや就業履歴蓄積(CCUS)の取組が新たに評価対象になりました。Wは短期的な「加入・届出」で伸ばせる項目が多い一方、未加入や法令違反の減点がPに直結するため、まず減点ゼロを目指します。
6-1. 従業員の社会保険加入状況|未加入による減点と確認書類
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の未加入は減点につながります。法定外労災制度への加入は加点項目です。
経営状況分析の申請では社会保険の加入状況を確認する書類の提出が求められ、未加入者がいると減点対象になります。役員・常勤職員が対象となるため、扶養親族を含めた加入状況の整理が必要です。加点側では、労災保険に上乗せする法定外労災(独自の労災特別加入)をしていると加点されます。確認書類は健康保険・年金の加入証明や保険料の納付確認などで、申請前に人事・給与データと突き合わせておきましょう。
6-2. 退職金制度の評価|建退共・中退共などの共済と退職一時金制度
退職金系は「建設業退職金共済(建退共)」と「退職一時金制度・企業年金(中退共など)」の2枠で評価され、両方に加入すれば二重に加点が期待できます。
建退共は加入することで素点15点の加点(P点換算でおよそ20点)があり、建設業の担い手確保の加点として定番の対策です。中退共に加入している場合は「退職一時金制度もしくは企業年金制度」の加点対象となり、建退共とは独立した項目として評価されます。それぞれ被共済者(加入対象職員)の実態が求められるため、加入人数の証明書類(建退共の履行証明書など)を揃えておきましょう。
6-3. 営業継続年数と建設機械の保有状況|評価対象と証明方法
W2の営業継続では「建設業許可を受けた日から審査基準日までの年数」が長いほど加点され、W7では保有する建設機械が加点対象になります。
営業継続の加点は年数に応じて階段的に大きくなります(例:20年で素点30点、35年以上で最高の86点など)。短期的には上げられない項目なので「先に許可・制度に加入しておくほど将来の点数になる」と理解するのが実態です。建設機械は自社所有の機械が加点対象で、リース・レンタル機械は評価が異なる点に注意が必要です。購入時の契約書や固定資産台帳、所有権保留の取り扱いなど、証明方法を行政書士と確認しておきましょう。
6-4. CCUSへの登録だけで加点される?就業履歴蓄積などの評価要件
CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録そのものより、登録した職員を確保し、就業履歴を蓄積する措置を実施しているかが評価のポイントです。
審査基準日が令和5年8月14日以降の申請から、CCUSの活用状況が加点評価に組み込まれました。評価対象となるのは、職員のCCUS登録と、就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況などです。業者登録しただけでは評価につながらず、職員に登録させて工事履歴を入力・蓄積している実態を証明できるようにします。登録運用は書類の整備が必要なため、実務担当を決めて継続運用するのがおすすめです。
6-5. 認定制度や宣言は加点対象になる?最新改正と評価基準の確認ポイント
認定制度や宣言の評価は近年の改正で拡大しています。令和8年7月改正では「建設技能者を大切にする自主宣言」などが加点対象に加わっています。
近年の改正では、ISO系の規格認証に加えて国が定める認証・登録や自主宣言の取組が評価対象に拡がっています。一方で、加点の内容・必要な書類・適用される審査基準日は改正ごとに変わるため、「なんとなく申請」は避けましょう。申請時点の評価基準は、国土交通省の案内や分析機関・行政書士の最新情報で確認し、申請書の該当欄に証明書類をそろえて臨むのが安全です。
7. 経審の点数の目安は?平均点・入札ランクから目標を決める
経審の点数は制度設計上、平均700点前後になるよう設計されています。目標は「平均との差」ではなく「狙う発注者の等級基準」から逆算して決めるのが正解です。
7-1. 経審の平均点はどのくらい?業種・企業規模・集計条件をそろえて比較
平均はおおよそ700点です。ただし平均値は、業種・企業規模・集計対象の条件によって大きく動くため、「見た目の平均」だけで優劣を判断しないこと。
各評点は制度設計時点で平均700点になるように作られています。比較するときは、①同じ業種区分か、②完成工事高の規模帯が近いか、③公表データの集計年度と条件がそろっているか、を確認してから読み解きましょう。点数は業種ごとに発行されるため、「自社の狙う業種の点数」を基準に考えるのが実務です。
7-2. 何点あれば公共工事を受注できる?参加要件と落札条件の違い
「入札に参加できる点数」と「落札まで競える点数」は別物です。参加要件は等級で切り分けられ、落札は価格・技術提案の競争で決まります。
多くの発注者は、工事金額帯ごとに「この等級以上」の参加要件を設けています。点数が低くても、低金額帯の工事や等級要件の緩い発注者であれば参加・受注は可能です。逆に、大きな工事を狙うなら等級アップ(=点数アップ)が前提になります。まずは「狙う工事の金額帯→必要な等級→必要なP点」の順に整理し、現状の点数との差を具体的な数字で把握しましょう。
7-3. 自社が狙う発注者・工事規模から必要な点数の目安を設定する
目標点数は「発注者ごとの等級基準」から逆算します。主な発注者を3〜5者に絞って必要等級を一覧化するのが実務的なやり方です。
- 主な発注者(国の直轄、都道府県、市町村、公営企業など)を3〜5者選ぶ
- 各発注者の入札参加資格審査基準から、狙う工事金額帯の必要等級を調べる
- 必要等級に対応するP点の目安を書き出す(東京都の例ではC等級=650点以上750点未満)
- 現在のP点との差を、X1・X2・Y・Z・Wのどの評点で埋めるか検討する
この一覧があると、「今回の決算で何点に乗せれば入札に出られるか」が経営判断として明確になります。
8. 経審申請の流れと準備|点数を正しく反映させる手続き
結論:経審は「決算確定→決算変更届→経営状況分析→経営規模等評価申請」の順で進めます。決算日から4か月以内の決算変更届が最初の期限です。
8-1. 決算から申請までの流れ|決算変更届・経営状況分析・経審の順序
申請は分析機関(経営状況分析)と許可行政庁(経営規模等評価)の2か所に分かれます。順序を間違えると結果が遅れ、入札のチャンスを逃します。
- 所要時間の目安:決算確定から結果通知書の受領まで、おおむね1〜2か月(自治体・機関により異なる)
- 必要なもの:確定した決算書、技術職員情報、工事実績、加入制度の証明書類
- 前提条件:建設業許可を受けていること、決算変更届の提出(決算日から4か月以内)
手順は次のとおりです。
- 決算を確定させる:建設業財務諸表の様式で決算書を作成する(税理士と確認)
- 決算変更届を提出する:許可行政庁へ、決算日から4か月以内に提出する
- 経営状況分析を申請する:登録経営状況分析機関に決算書を提出し、Y評点のもとになる分析を受ける
- 経営規模等評価申請・総合評定値請求をする:許可行政庁へ申請書と証明資料を提出する
- 結果通知書を受け取る:総合評定値Pと各評点を確認し、発注者の等級基準と照らす
- 入札参加資格審査を申請する:各発注者宛てに資格審査の申請を行う
8-2. 申請に必要な書類・資料|決算書・資格証明・工事実績の準備
必要書類は「決算関係」「技術職員関係」「工事実績関係」「加入制度関係」を準備します。
- 決算関係:建設業財務諸表(法人は貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表、個人は貸借対照表・損益計算書など)、兼業事業売上原価報告書
- 技術職員関係:技術職員名簿、資格証明書(施工管理技士・建築士など)、監理技術者講習の修了証、雇用契約書・社会保険の加入証明
- 工事実績関係:完成工事高の内訳資料(請負契約書・検査済証など)、元請・下請の区分がわかる資料
- 加入制度関係:建退共の履行証明書、中退共・社会保険の加入証明、建設機械の購入契約書や固定資産台帳、ISO認証書など
書類の様式や添付の要否は自治体・機関ごとに異なります。申請書様式の記載例(各地方整備局の手引きなど)を入手して、事前に揃えるのが安全です。
8-3. 審査手数料はいくら?申請業種数と分析機関による費用の違い
法定手数料は「経営規模等評価(8,100円+2,300円×業種数)」と「総合評定値通知(400円+200円×業種数)」の合計です。これに、機関ごとに設定がある経営状況分析の手数料が加わります。
同時申請の例では「8,500円+2,500円×業種数」と整理でき、業種数が増えるほど手数料も増えます(例:1業種11,000円、2業種13,500円、3業種16,000円)。経営状況分析の手数料は分析機関ごとに異なり、例えばCIACでは8,800円(税込)です。申請する業種数と機関の料金表を事前に照らして、費用を見積もっておきましょう。行政書士に代行を依頼する場合は、別に報酬がかかります。
8-4. 申請前に確認したい記載漏れと不整合|変更届や証明書との照合
経審で点数が伸びない・修正要求が来る原因の多くは「記載漏れと不整合」です。申請前に3つの照合を行います。
- 決算変更届と決算書の照合:金額・決算期・消費税の扱い(課税事業年度は税抜経理)が一致しているか
- 技術職員名簿と証明書の照合:資格の等級・講習の有効期限・雇用と社会保険の実態が一致しているか
- 工事実績と実態の照合:完成工事高の業種別振り分け・元請下請の区分が契約書類と整合しているか
- このほか、財務諸表間の金額の一致5%を超える資産の科目明記、準備金・引当金の科目名の記載など、建設業財務諸表の作成ルールも確認ポイントです。不整合があると審査が止まり、入札の締切に間に合わなくなることがあります。
9. 経審の点数アップを進める実践手順と専門家への相談方法
点数アップは「現状分析→短期対策→中長期対策→専門家との継続運用」の順で進めます。W系の加点は即効性があり、X1・Z・Yは中長期の取り組みです。
9-1. まず現状の評点を分析|加点余地と改善に必要な費用・期間を比較
結果通知書の5評点を「目安700点・各評点の上限」と比べ、改善余地が大きく、費用対効果の高い項目から着手します。
- 通知書のX1〜Wを書き出す:業種ごとに一覧表にする
- 各評点を700(平均目安)と比べる:下回っている項目が改善候補
- 上限との差を確認する:X2やWは加点余地が構造的に見える
- 改善手段ごとに費用・期間を比較する:例えば「建退共加入=掛金が少額で即効」「1級資格者の監理講習=受講料・時間がかかるがZで効く」「借入返済=期間がかかるがYに効く」
- 来期の目標P点を決める:必要等級から逆算した数字を設定する
9-2. 決算直前にできる対策と中長期の対策|資格取得・財務改善を計画する
直前対策は「Wと決算書の計上整理」、中長期対策は「Z(人材・実績)とY(財務)」に分けて計画します。
- 決算直前までにできる対策:受取利息の計上、建退共・中退共への加入、法定外労災の加入、社会保険未加入の解消、CCUS登録と就業履歴の蓄積、遊休固定資産の整理
- 中長期の対策:技術職員の採用と2級→1級への取得支援、監理技術者講習の受講、元請実績の確保、借入金の返済計画、利益剰余金の積み上げ、建設機械の計画的な保有
- 直前対策はWの加点・減点の整理が中心で効果が出るのが早い一方、Pの重みが大きいX1とZは1年では変わりません。「今年はWで減点ゼロ+加点を积む」「3か年計画でZとYを伸ばす」というように、時間軸を分けて計画するのが現実的です。
9-3. 行政書士に依頼できる業務と費用|事務所への電話相談前に整理する情報
申請手続そのものは行政書士に依頼できます。相談の前に「決算月・業種・前回点数・目標等級・職員構成」を整理しておくと、相談の精度が大きく上がります。
- 依頼できる業務:経営規模等評価申請・総合評定値請求の作成・提出、経営状況分析の申請手続、入札参加資格審査の申請、書類の不整合チェック
- 費用:事務所ごとに報酬基準が異なります(法定手数料のほか、申請代行報酬が加算)。目安は公式に一律で決まっていないため、複数事務所で比較を
- 電話相談前に整理する情報:①決算月と直近の決算日、②許可業種と申請予定の業種数、③前回のP点と各評点、④常勤の技術職員数と資格、⑤狙っている発注者と工事の金額帯、⑥現在加入している制度の一覧
このリストを1枚にまとめると確認できます。
9-4. 法務・会計の専門家と連携し、毎年の審査に向けて改善を継続する
一度点数を上げても、翌年の決算で財務内容が悪化すれば点数は下がります。毎年同じ手順で回せるように、「決算後の申請スケジュール表」「書類チェックリスト」「加点・減点の台帳」を社内テンプレート化しておくのがおすすめです。改正(令和5年1月・8月、令和7年7月、令和8年7月など)が続く制度のため、年1回は最新の評価基準を見直す時間を確保してください。
10. 経審の点数に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 経審の平均点は何点くらいですか?
A. 制度設計上、平均は700点前後になるように作られています。ただし業種・規模・集計条件で分布は変わるため、自社が狙う業種・発注者のデータと比べることが大切です。
Q2. 経審点数の最高点と最低点は何点ですか?
A. 審査基準日が令和5年8月14日以降の申請では、計算上の上限は2,160点、下限は6点です。Wの減点が重なると点数が大きく下がる仕組みのため、減点の解消が最優先です。
Q3. 経審の結果の有効期間はどのくらいですか?
A. 審査基準日(原則決算日)から1年7か月です。期限が切れると入札に参加できなくなるため、毎年の決算ごとに更新受審をするのが実務上の基本です。
Q4. 点数アップはどの対策から始めるのがおすすめですか?
A. まず減点になりうる要素(社会保険未加入・法令違反など)の解消、次に即効性のあるWの加点(建退共・中退共・法定外労災・CCUSの実態運用)、その後にX1・Z・Yの中長期対策という順番が基本です。自社の通知書の評点を見て、平均700を下回る項目から手をつけましょう。
Q5. 建設業許可と経審、どちらから取得すればいいですか?
A. 建設業許可が前提になるため、必ず許可が先です。許可後、決算を確定させてから経審の申請に進みます。新規許可の直後は決算実績の関係で評価が限定される場合があるため、1期目の決算設計から専門家と相談するのが安全です。
