特定技能1号の外国人を雇う企業は、法令で定められた「義務的支援10項目」を必ず実施しなければなりません。登録支援機関に支援計画の“全部”を委託すれば、企業側の支援体制の基準は満たしたとみなされます。ただし負担がゼロになるわけではなく、委託費用と委託先を監督する責任は伴ってきます。
この記事の趣旨
- 対象読者:特定技能1号外国人の受入れを検討中/実施中の企業の経営者・人事担当者。あわせて、登録支援機関への登録を考えている方。
- わかること:①登録支援機関の役割と業務範囲、②義務的支援10項目の中身と実務要件、③自社支援と外部委託で企業の負担がどう変わるか、④選び方・費用・委託契約の注意点、⑤登録支援機関になるための要件と手続き。
- ポイント:委託しても企業側に残る義務(監督・届出・定期的な面談など)があるため、「委託すれば終わり」ではなく、契約で支援範囲と責任分担を確定させ、残る義務を回す社内体制を決めることが成否を分けます。
目次
- 登録支援機関の業務範囲|特定技能1号の支援は誰の義務?
- 登録支援機関が実施する義務的支援10項目
- 登録支援機関一覧の調べ方と失敗しない選び方
- 登録支援機関の費用・料金と業務委託契約の注意点
- 登録支援機関になるには?登録の要件と申請手続き
- 手順まとめ(HowTo)
- よくある質問(FAQ)
- 出典
1. 登録支援機関の業務範囲|特定技能1号の支援は誰の義務?
支援の義務を負うのは、あくまで受入れ企業(特定技能所属機関)です。 登録支援機関は、その義務の履行を委託される側であり、義務そのものが移転するわけではありません。「委託したから責任は委託先にある」とはならない点が、契約実務の出発点になります。
1-1. 特定技能所属機関の義務と登録支援機関へ委託できる業務
- 受入れ企業は支援計画を作成し、在留諸申請時に提出します。(変更があれば届出も必要)。
- 支援計画の実施は、全部または一部を登録支援機関に委託できます。
- ただし一部委託の場合、「定期的な面談の実施・行政機関への通報」は第三者に委託できません。
- 登録支援機関は、委託を受けた支援業務を再委託できません(通訳人などの履行補助者の活用は可)。
- 登録を受けるには支援計画の全部を実施できる体制が必要で、「支援の一部だけ」を行う前提では登録を受けられません。
根拠:出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(運用要領掲載ページ)/登録支援機関について
1-2. 義務的支援と任意の支援の違い|必須の10項目を理解する
支援には、必ず実施しなければならない義務的支援(10項目)と、実施が望ましい任意的支援があります。ここで実務上の落とし穴が1つ。
任意的支援であっても、支援計画に「実施します」と記載すれば実施義務が生じます。「できたらやろう」程度の項目を計画書に書き込むと、後から自社の基準不適合リスクになります。計画に書くのは、確実に実施できるものだけにしてください。
また、支援を怠った場合の影響は長期に及びます。支援計画の実施についての基準には、「特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、支援計画に基づいた支援を怠ったことがないこと」が含まれており、一度怠ると、その後5年間にわたって基準不適合を抱えることになります。支援の実施が困難になったときは、「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出書」の提出が必要です。黙って止めるのが最も悪い対応です。
根拠:運用要領/1号特定技能外国人支援・登録支援機関について/運用要領改正のポイント(令和7年4月1日改正)
1-3. 自社で支援する場合と外部委託する場合の条件・メリットを比較
| 観点 | 自社で支援する | 登録支援機関に全部委託する |
|---|---|---|
| 支援体制の基準 | 自社で満たす必要がある | 全部委託なら基準を満たしたものとみなされる |
| 必要な人員 | 支援責任者の選任+事業所ごとに1名以上の支援担当者 | 社内の選任は不要(現場の協力は必要) |
| 必要な実績・経験 | 支援担当者に外国人の生活相談業務経験等が求められる区分がある | 登録支援機関側の要件 |
| 言語対応 | 母国語・理解できる言語での対応を自社で用意 | 支援機関の対応言語に依存(対応言語の確認が必須) |
| 初期費用 | 講習・教材・同行工数などの内部コスト | 初期費用+月額支援委託費 |
| 継続コスト | 人件費(内部工数) | 月額の委託費(変動費) |
自社支援には「支援責任者を選任し、事業所ごとに1名以上の支援担当者を置く」体制要件があり、支援担当者には外国人に対する指揮命令権を持たない立場(中立性)が求められます。たとえば製造課の職員を支援担当者にする場合、その外国人が属する部署の長(製造部長等)は指揮命令権を持つため適格性がありません。この中立性要件は、自社支援で最もつまずきやすいポイントです。
根拠:運用要領
2. 登録支援機関が実施する義務的支援10項目
義務的支援は次の10項目です。対象は特定技能1号のみで、2号には支援義務がありません(2号へ移行した外国人は支援計画の対象外)。
| No | 支援項目 | 要件のポイント | 実施時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事前ガイダンス | 労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等を、対面またはテレビ電話等で説明 | 在留諸申請の前 |
| 2 | 出入国する際の送迎 | 入国時は空港等と事業所・住居の間の送迎。 帰国時は保安検査場への入場まで同行 | 入国時・帰国時 |
| 3 | 住居確保・生活に必要な契約支援 | 連帯保証人になる・社宅提供等。銀行口座・携帯・ライフラインの契約を案内・補助 | 入国前〜入国時 |
| 4 | 生活オリエンテーション | 日本のルール・マナー、公共交通の利用、連絡先、災害時の対応等を説明 | 入国後 |
| 5 | 公的手続等への同行 | 住居地・社会保障・税などの手続に同行し、書類作成を補助 | 入国後・随時 |
| 6 | 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室等の入学案内、学習教材の情報提供(機会の提供が義務) | 在留中・随時 |
| 7 | 相談・苦情への対応 | 外国人が十分に理解できる言語で対応し、内容に応じ助言・指導 | 在留中・随時 |
| 8 | 日本人との交流促進 | 自治会等の地域住民との交流、地域行事の案内・参加の補助 | 在留中・随時 |
| 9 | 転職支援(人員整理等の場合) | 受入れ側の都合で契約解除する場合の転職先探索、推薦状、求職活動のための有給休暇付与等 | 契約解除時 |
| 10 | 定期的な面談・行政機関への通報 | 外国人のみならず、その監督者とも定期的に面談(3か月に1回以上)。労働基準法違反等があれば通報 | 在留中・定期 |
根拠:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」(10項目の内容)/運用要領(面談頻度・オンライン可等)
2-1. 事前ガイダンスと出入国時の送迎|日本での就労に向けた準備
事前ガイダンスは、雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の前に行います。つまり最初の義務的支援は、入国前に発生します。説明内容は、業務内容・報酬・労働条件、日本で行える活動の内容、入国手続、保証金の徴収や違約金契約等がないことの確認、支援に要する費用を外国人本人に負担させないこと、入国時の送迎の有無、住居確保に関する支援内容、相談、苦情の連絡先などです。テレビ電話等でも構いませんが、音声のみは不可とされています。実施後は確認書を作成し、本人の署名を得ます。
出入国する際の送迎は、入国時に出入国港と事業所または住居との間を送迎し、帰国時には空港の保安検査場まで同行します。「空港で降ろして終わり」では要件を満たしません。出国時の対応が見落とされやすいポイントです。
根拠:出入国在留管理庁
2-2. 住居の確保・生活に必要な契約支援と生活オリエンテーション
住居確保・生活に必要な契約支援は、連帯保証人になる、社宅を提供するなどして住居を確保し、銀行口座の開設、携帯電話、電気・ガス・水道などの契約を案内・補助します。実務では、入管の基準だけでなく自治体のルールや賃貸契約実務(保証会社等)との整合を取る必要があり、ここが最初の難所になります。
生活オリエンテーションは入国後に、日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応などを説明します。地震・台風時の行動や避難場所の説明は、外国人材と地域の双方にとって実利のある必須項目です。
要確認:住居の面積要件として「1人あたり7.5㎡以上」という解説が一般に見られますが、登録申請・受入れの実務では、運用要領別冊(支援)や申請時の提出書類でご確認ください。
2-3. 行政機関での手続きへの同行と日本語の学習機会の提供
公的手続等への同行は、必要に応じて住居地の届出、社会保障、税などの手続に同行し、書類作成を補助します。入国直後は窓口での日本語対応が難しいため、同行の有無がその後の生活トラブルの差になります。
日本語学習の機会の提供は、日本語教室等の入学案内、教材の情報提供など、「機会を提供すること」が義務です。日本語能力の向上そのものを保証する義務ではありませんが、就労・生活上の支障が生じているのに機会提供をしない状態は、支援の不履行と評価され得ます。
根拠:出入国在留管理庁
2-4. 理解できる言語・母国語での相談や苦情対応と日本人との交流促進
相談・苦情への対応は、職場や生活上の相談・苦情について、外国人が十分に理解できる言語で対応し、内容に応じて必要な助言・指導を行うものです。相談と苦情の対応記録は、支援の実施状況を示す帳簿書類として保存が求められます。日本語での窓口しかない状態では、支援としては不十分です。
日本人との交流促進は、自治会等の地域住民との交流の場、地域のお祭りなどの行事への案内や参加の補助を行います。この項目は「やった感」が見えにくい一方で、外国人の定着率に効いてくる項目です。
2-5. 本人の責めによらない離職時の転職支援と定期的な面談・行政機関への通報
転職支援(人員整理等の場合)は、受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合に、転職先を探す手伝いや推薦状の作成に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報提供を行います。「本人の責めによらない離職」への備えを、平時から決めておく必要があります。
定期的な面談・行政機関への通報は、支援責任者等が外国人本人と、その監督者との双方に、3か月に1回以上の頻度で面談し、労働基準法違反等があれば通報するものです。定期面談報告書の作成・保存が必要で、相談記録とあわせて支援実施の証跡になります。受入れ企業が支援の一部のみを委託する場合、この項目は委託できない点も押さえてください。
令和7年4月1日の運用要領改正により、定期面談はオンライン会議システム等を活用した実施が可能になりました。また同改正で、支援計画は地方公共団体が実施する共生社会の実現のための施策を踏まえたものであることが要件に加わり、受入れ企業は事業所の所在地と住居地が属する市区町村へ「協力確認書」を提出する運用になっています。
根拠:運用要領改正のポイント(令和7年4月1日改正)/地域との共生施策に関する連携に係るQ&A/協力確認書の掲載ペー
3. 登録支援機関一覧の調べ方と失敗しない選び方
3-1. 出入国在留管理庁の登録支援機関一覧で登録状況と所在地を確認
一次情報は出入国在留管理庁が公表する「登録支援機関登録簿」です。2026年10月15日現在で11,684件が登録されており、Excel形式(日本語版・英語版)でダウンロードできます。
注意点は2つ。登録簿には登録後に抹消された機関は掲載されていないため、依頼前に最新版で再確認すること。そして、登録があること=支援の質が高いこと、ではありません。登録は入口の要件にすぎません。
3-2. 対応する国籍・言語・地域と採用予定の外国人との相性を確認
採用予定の外国人が理解できる言語での対応可否は、最初に確認すべき項目です。社内に通訳がいないなら、支援機関の対応言語がそのまま実務の成否を決めます。あわせて、事業所・住居の所在地(自治体の共生施策や協力確認書の実務に影響)と、緊急時の連絡体制・相談対応時間を確認します。
3-3. 業界・特定技能の分野別に支援実績と強みを比較
同じ登録支援機関でも、介護、外食業、農業、建設など分野ごとに実績の差があります。分野ごとの試験・日本語要件、住居確保の実務、自治体との関係はかなり異なるため、「自社の分野で何人受け入れ、定着しているか」を具体的な数字で確認しましょう。
3-4. スタッフの体制・相談対応時間・利用企業の満足度を確認
確認したいのは、支援担当者の人数と1人あたりの担当件数、何語で・何時まで相談できるか、定期面談の実施方法(対面かオンラインか)、記録の管理体制です。利用企業の声を確認する場合は、「何人受入れて、何人が定着しているか」という成果側の数字とセットで見てください。
3-5. 支援内容と外国人の定着実績を見極める
「おすすめランキング」は、広告掲載料や提携関係で順位が決まっていることがあります。判断軸は①対応言語、②自社分野の実績、③費用の総額と内訳、④契約で責任分担が明確か、⑤定着実績の5つです。最後は自社の条件で比較してください。
4. 登録支援機関の費用・料金と業務委託契約の注意点
4-1. 初期費用・月額料金・追加費用を含めた総額の比較方法
出入国在留管理庁の調査では、特定技能人材1人あたりの月額支援委託費用の平均は28,386円、登録支援機関の71.8%が月額15,000円から30,000円程度の範囲に設定しています。また、入国前の事前ガイダンスや生活オリエンテーションなどは、月額委託費とは別に初期費用が発生することが多いとされています。
比較は必ず「総額」で行ってください。 見るべきは、①初期費用(項目別の有無)、②月額(1人あたり/何歳まで対象か)、③在留諸申請の代行費用が含まれるか、④更新時の費用、⑤解約時の精算、⑥交通費・通訳費などの実費です。単価の安い機関が総額でも安いとは限りません。
根拠:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」(調査の出典として)
要確認:項目別の支援単価(事前ガイダンス◯万円、定期面談◯円など)は機関ごとに設定が異なり、公的な統一単価はありません。見積書の内訳で確認してください。
4-2. 業務委託契約で明確にする支援範囲・責任分担・報告方法
契約書で必ず押さえるのは次の4点です。
- 支援範囲:10項目のうち何を委託するか(全部委託か一部委託か)。一部委託なら、委託できない「定期的な面談・行政機関への通報」は自社実施になります。
- 責任分担:支援の不履行、在留申請の不許可、労務トラブル(賃金未払い等)が起きた場合の役割分担と対応手順。
- 報告方法:定期面談報告書・相談記録の共有頻度と様式、異常時の連絡ルート(誰に・何時間以内に)。
- 費用と変更手続:費用の内訳、増減の条件、契約変更・解除の手続き。
なお、入管法上、受入れ機関が支払う支援委託費用の上限は定められていません。金額の高さと支援の質は比例しないため、内容の確認が前提です。
根拠:出入国在留管理庁
4-3. 契約解除・支援機関の変更時に確認する条件と引継ぎの注意点
登録支援機関の登録は5年間有効で、更新を受けなければ効力を失います。更新申請は有効期間満了日の6か月前の月の初日から4か月前の月の月末までに行う必要があります。契約先が更新申請をしていない/更新できていないケースは、変更のタイミングになり得ます。
注意点として、登録有効期限が到来する月の3か月前の月末を経過してから更新申請すると、有効期間内に更新が認められず、申請手数料の返還も行われません(新規の登録申請が推奨されています)。委託先の更新予定は早めに確認しておきましょう。
変更時は、①記録(支援計画・面談報告書・相談記録)の引継ぎ、②入管への届出(支援委託契約の締結・変更・終了)を漏らさないことが重要です。契約解除の条件(予告期間・違約金・未実施分の精算)は契約時に確認しておきましょう。
根拠:登録支援機関の登録申請/登録支援機関の登録更新申請(有効期間5年・更新申請時期)
4-4. 人材紹介と支援委託は別契約?採用・雇用契約を巡るリスクに注意
採用(人材紹介)と支援委託は、性質の異なるサービスです。 登録支援機関の中には人材紹介を兼ねる事業者もありますが、人材紹介は職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可が必要な別制度で、登録支援機関の登録とは別に確認しなければならない事項です。契約書は「①採用の契約」と「②支援委託の契約」で分けるのが安全です。
また、費用面では採用時の一時金(紹介料等)と月額支援委託費の二重の支払いになりがちです。「採用できなければ月額は発生しない」「採用後◯か月で離職した場合の取扱い」を事前に確認しておくと、後々のトラブルを避けられます。
要確認:人材紹介を兼ねる事業者については、有料職業紹介事業の許可の有無を厚生労働省の公表情報等でご確認ください。雇用契約・労働条件の決定は受入れ企業自身が行うものであり、委託先に委ねることはできません。
5. 登録支援機関になるには?登録の要件と申請手続き
5-1. 登録支援機関に必要な支援実績・担当者・中立性などの要件
登録を受けるための主な要件は次のとおりです。
- 機関自体が適切であること:法令等を遵守し、「禁錮以上の刑に処せられた者」などの欠格事由に該当しないこと(暴力団排除の観点も含む)。
- 外国人を支援する体制があること:支援計画の「全部」を実施できる必要があり、支援の一部のみを行うものとして登録を受けることはできません。
- 再委託の禁止:受託した支援業務は自ら行う必要があり、他の機関への再委託は禁止(通訳人等の履行補助者は可。登録前に再委託を受ける行為も不正行為に該当)。
- 支援責任者・支援担当者:支援計画の実施に関する責任者と、支援を担当する者の選任が求められ、中立性(外国人を監督する立場にない者であること)などの要件があります。
- 受入れ機関との契約:登録の前提として、受入れ機関と業務委託のための契約を結ぶ必要があります。
根拠:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」/運用要領
5-2. 登録申請に必要な書類・手数料・審査期間の確認方法
申請先は申請者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方出入国在留管理局又は同支局(空港支局・出張所を除く)で、郵送申請が可能(オンライン申請には未対応)です。手数料は新規登録28,400円、登録更新11,100円(いずれも申請時に納付)で、金額は出入国在留管理庁の手続ページに明記されています。審査期間はおおむね2か月とされており、支援業務を開始する予定日のおおむね2か月前までに申請する運用です。必要書類は登録支援機関登録(更新)申請の提出書類として公示されているため、申請様式一覧から最新の様式をダウンロードして作成します。書類の体裁や記載内容は改正され得るため、必ず申請時に最新版を確認してください。
根拠:出入国在留管理庁「登録支援機関の登録申請」/「登録支援機関の登録更新申請」
5-3. 登録後に求められる届出・記録管理・更新と法令遵守
登録後の主な義務は、①外国人への支援を適切に実施すること、②出入国在留管理庁への各種届出を行うことです。これらを怠ると登録が取り消されることがあります。
実務では、支援に係る帳簿・記録の作成と保存(事前ガイダンスの確認書、定期面談報告書、相談記録など)が日々の業務になります。また、受入れ企業側には定期届出(特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に関する届出)の義務があり、令和7年4月改正以降、機関の適格性に関する書類はこの年1回の定期届出で確認される枠組みになっています。
根拠:出入国在留管理庁/運用要領改正のポイント(令和7年4月1日改正)/育成就労制度(出入国在留管理庁)/育成就労制度運用要領
各手順まとめ
特定技能1号の受入れで支援を委託するまでの手順
必要なもの:雇用契約書、支援計画の原案、登録支援機関の見積書・契約書。
- 受入れ時点での支援義務を確認する:自社で支援するか、登録支援機関へ委託するかを決める。
- 登録支援機関の候補を集める:出入国在留管理庁の登録支援機関登録簿(最新版)で、所在地・登録の有無を確認する。※登録簿は抹消分が載らないため、必ず最新版を使用する。
- 対応言語・分野実績で絞り込む:採用予定者の母国語に対応できるか、自社の分野での受入れ実績があるかを問い合わせる。
- 見積書を取り、総額で比較する:初期費用/月額/在留申請代行/更新時/解約時を項目別に並べる。
- 委託契約を締結する:支援範囲、責任分担、報告方法、費用と変更手続を書面で確定する(定期的な面談・行政機関への通報は、一部委託の場合に委託できない)。
- 支援計画を作成・提出する:支援計画を作成し、在留諸申請時に提出する(全部委託の場合も、作成について委託先の援助を受けてよい)。共生施策を踏まえた内容とし、協力確認書を市区町村へ提出する。
- 受入れ後、体制を運用する:定期面談(3か月に1回以上)・相談記録の共有ルートを運用し、社内の担当者を決めておく。
- 届出を回す:雇用契約の締結・変更・終了、支援委託契約の締結・変更・終了、受入れ困難、定期届出(年1回)などを期限どおりに提出する。
登録支援機関を選ぶときのチェック手順(5ステップ)
- 登録の有無と最新性を確認する:登録簿の最新版で、登録があること・抹消されていないことを確認する。
- 対応言語と、実際に何語で相談できるかを確認する:パンフレットの表記ではなく、支援担当者の言語を確認する。
- 自社の分野での受入れ人数と定着実績を数字で確認する。
- 費用の総額と内訳を並べる:月額の安さではなく、初期費用・申請代行・更新時・解約時を含めた総額で比較する。
- 責任分担と報告の仕組みを契約書で確認する:定期面談報告書と相談記録の共有方法、異常時の連絡ルート、支援不履行時の対応を確認する。
登録支援機関になるまでの手順
必要なもの:登録申請書、手数料、収入印紙、必要書類一式。
- 支援体制を整える:支援責任者・支援担当者を選任し、中立性(対象外国人への指揮命令権がないこと)を確認する。
- 受入れ機関と業務委託契約を締結する:登録の前提となる契約を結ぶ。
- 提出書類を最新の様式でそろえる:登録支援機関登録(更新)申請の提出書類を、申請様式一覧からダウンロードして作成する。
- 地方出入国在留管理管理局へ申請する:手数料を納付して申請する。
- 登録後の運用体制を作る:帳簿・記録(事前ガイダンス確認書・定期面談報告書・相談記録等)の作成と保存、入管への各種届出のフローを決める。
- 更新時期を管理する:登録は5年。有効期間満了日の6か月前の月の初日から4か月前の月の月末までの更新申請を、カレンダーに登録する。
よくある質問(FAQ)
Q1. 義務的支援の10項目とは何ですか? A. ①事前ガイダンス、②出入国する際の送迎、③住居確保・生活に必要な契約支援、④生活オリエンテーションと、⑤公的手続等への同行、⑥日本語学習の機会の提供、⑦相談・苦情への対応、⑧日本人との交流促進、⑨転職支援(人員整理等の場合)、⑩定期的な面談・行政機関への通報の10項目です。対象は特定技能1号のみで、2号には支援義務がありません。
Q2. 登録支援機関に委託すれば、企業の負担はゼロになりますか? A. なりません。支援計画の全部を委託すれば支援体制の基準は満たしたとみなされますが、①委託費用(1人あたり月額平均28,386円)の負担、②委託先が適切に支援しているかの監督、③入管への各種届出。
Q3. 支援を自社で行う場合、担当者は誰でもよいですか? A. 誰でもよいわけではありません。支援責任者は支援担当者を監督する立場の者、支援担当者は外国人に対する指揮命令権を持たない中立的な立場の者である必要があります。たとえば対象外国人が属する部署の長は指揮命令権を持つため、支援担当者として適格性がありません。
Q4. 登録支援機関の費用はいくらが相場ですか? A. 出入国在留管理庁の調査では、1人あたりの月額支援委託費用の平均は28,386円、71.8%の機関が月額15,000〜30,000円の範囲に設定しています。事前ガイダンスや生活オリエンテーションなどの初期費用が別途発生することが多いため、比較は総額で行ってください。入管法上の費用上限の定めはありません。
Q5. 制度改正で何か変わりましたか? A. 令和7年4月1日の運用要領改正で、①定期面談のオンライン実施が可能になり、②支援計画に地方公共団体の共生施策を踏まえることが要件に加わり、市区町村への協力確認書の提出運用が始まりました。
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出典
特定技能・登録支援機関
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」(義務的支援10項目、みなし規定、再委託禁止、登録の有効期間5年、手数料28,400円/11,100円)
- 出入国在留管理庁「登録支援機関登録簿」(2026年10月15日現在 11,684件)
- 出入国在留管理庁「登録支援機関の登録申請」
- 出入国在留管理庁「登録支援機関の登録更新申請」
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(支援責任者・支援担当者、中立性、支援不履行の基準、定期面談3か月に1回以上、一部委託時の委託不可項目)
- 出入国在留管理庁「運用要領改正のポイント(令和7年4月1日改正)」PDF
- 出入国在留管理庁「特定技能制度における地域との共生施策に関する連携に係るQ&A」/協力確認書
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」(申請・届出様式一覧等)
- 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」PDF(支援委託費用の調査)
育成就労制度
- 出入国在留管理庁「育成就労制度」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」PDF(施行日:令和9年4月1日)
